那須町文化センターへ那須薪能を見に行って来ました!
露美、能は初めてですが、これはプロの能楽師が初めに判り易く解説してくれるそうですっ。恥ずかしながらワークショップって何だか知りませんでしたが、説明会みたいなものかな?
今回、気が付いた時には前売り券は売切れだったので当日券を買いました。開場少し前にに行くと既に行列でした。←田舎者なのでちょっと並ぶと長く感じる(^^ゞ
予定では外の駐車場に舞台を作って開催のハズでしたが残念ながら雨の為、大ホールで開催となりました。
大ホールに入るとホールの舞台の上に、能の舞台が作ってありました。大ホールの中は撮影禁止でしたので露美の拙い絵でご勘弁下さい。本舞台はこの絵より幅が広かったです(^^ゞ。えっと地謡座(ジウタイザ)以外の本舞台だけで正方形でした。絵の方は本舞台が細長くなっちゃった(^^;。たしか橋掛りももう少し長かったと思います。
【ワークショップ】
初めにプロの能楽師から初心者向けの説明会が1時間ほどありました。
能は600年もの歴史があり、第三代足利将軍義満の目に留まった観阿弥・世阿弥から代々伝えられてきた伝統芸能だそうです。基本の足を滑らすような擦り足などを見せてくれたり、能の地謡を聞かせてくれたりしました。本来、能は狂言とセットで、能5演目の間に狂言が4つ演じられ、1日がかりの興行だったというお話も聞きました。狂言はより庶民的で現在の漫才みたいなものだったのに対し、能は無駄な動きを削ぎ落し洗練された物になっていったそうです。狂言は現実、能は夢幻の世界を演じているのだそう。能には
250余もの
演目があり、その中で
栃木県が舞台のものが
3つ。その内
2つが那須町が舞台の物語だそうです。
着付け
一通り能の説明が終わると、普段は見れない舞台裏の着付けを見せてくれました。シテと言う主役の人が白い短い着物とズボンの様な、能の下着姿で舞台に現れました。着つけは袴姿の男性4人がかりで行いました。最初に上半身の着付けを行い、次に馬の毛で髪の毛を作ります。カツラの様に出来あがったものでは無く、ただの馬の尻尾みたいな物でした。それを後で能面を付けた時に能面に書かれた髪の毛と繋がる様に締め込み、編み込み、仕上げるそうです。上半身、髪の毛が出来上がるとやっと袴を履きます。そして最後に面をつけました。この作業は汗だくになるんだそうです。でも流れるように作業が進むので、傍から見るとそんなに力仕事のようには見えません。でも舞台ギリギリまで着つけて汗だくのまま舞台に上がる事もあるそうです。
『さて折角ですから、少し舞ってもらいましょう。』とシテ役が舞いを披露してくれるようです。ここで、
びっくりっ!
着付けの人は引っ込むのかと思ったら、2人残り
地謡として座りました。えっ?着付け専門の人が居るんじゃないんだっ!!先程汗だくで舞台に上がると言ってたのは、シテじゃなくて着付けをした地謡の人だったのかー!?
地謡に合わせてシテが舞い始めました。太鼓も鼓も笛もありません。でも露美、初めて見た能なのに地謡の合間に笛と鼓の音が聞こえるようでした。なんだ、この感覚。えっ?能のリズムって日本人の遺伝子に書いてあるのっ?、、、いやいや、TVで耳にしていて知らず知らずの内に染みついていたのでしょう(^^;。我ながら、びっくりしました。それにしても、地謡やタンッと踏みならす足音に合わせて、甲高い笛の音、乾いた鼓の音が本当に聞こえた気がしましたよっ?
囃子(四拍子)
続いて楽器の説明。シテ役や地謡の人達に変わって、囃子4人組の登場です。囃子(ハヤシ)は別名四拍子(シビョウシ)とも言うそうです。意外と若い人達でした。印象的だったのは、小鼓の
紐を握ると音の高さが変わって
音色が変わる事!鼓なんてポンと叩く打楽器だと思っていましたが、小鼓には音色があるんですって!小鼓にはある程度の湿気が必要で、大鼓(オオツヅミ)は乾いていないといけないんですってー。笛も太鼓(タイコ)も難しそうでした。が、音色は何だかお祭りで良く聞く音の様な気がしました。
火入れ式
火入れ式は黒田原神社の神主さんが行いました。本当は外の駐車場で開催のはずでしたが屋内になったので、薪の台には電球が入っていました。室内にしては会場をだんだん夕暮れにして行く明りの演出が雰囲気出てて頑張っている感じでした。火入れ式の時、黒子さんが鏡や榊ののった台を運んだり、神主さんが夕闇が迫る演出の中、祝詞をあげたりしました。この時、露美はじめて足音を聞きました!
さっきまで能楽師さん達のワークショップでは、普通に歩いているように見えた時も足音はしていませんでした。露美「随分立派な本舞台を大ホールの中に組み立てたんだなぁ。」と思っていました。でも違った!黒子さんが舞台を歩くと肩が上下してるのが、ものすごく気になるし、ガタガタと板を踏み鳴らす音が響いています。神主さんは静かに歩いていても、能楽師と比べると足音がする~っ。たぶん、普段だったら「神主さんは静かに歩くものだなぁ」とか思いそうな位しか足音していなかったと思いますっ。
でもっ、能楽師は、囃子も、地謡も、シテも、着付けを手伝って引っ込んだ人も、誰~もっ、足音をさせていなかったんですっ!露美てっきり、仮設舞台の造りが立派なんだと思っていました~っ。違ぁ~うっ!能楽師、この世のものとは思えない技を持った人達です!!夢幻の世界を演じるとは、こう言う事なのかーっ!? 恐るべし能楽師の技っ。
休憩
たった1時間のワークショップでしたが、これから出演するプロの説明は目新しい事ばかり。びっくりの連続でした。能なんて難解で聞いても分らないとばかり思っていましたが、日本の伝統芸能恐るべしです。露美、度肝を抜かれっぱなしでした。でも、本番はこれからです!
町長挨拶
正直言って町長の挨拶なんて形式的な無くても良いものだと思っていました。でも那須町町長さんが紋付き袴で登場すると、盛大な拍手と暖かい笑いがおこりました。とても町民に愛されている町長さんの様です。露美が心底びっくりしたのは、高久勝町長が、能と放射能をかけて笑い取った事です!(@O@)。ここで町民から放射能ネタで笑いを取れるって事は、町長も町民も放射能に対してしっかり向き合ってきたってことでしょう。放射能の話題をタブー視してきたらこうはなりませんっ。そして町民一丸となって頑張って来たのでしょう。放射能が降った観光地として出来る事をして、観光客のニーズを察して、前進してきたのでしょう。那須町の人達の前向きな態度が、この町長さんの態度からうかがえました。短いけど、とても良い挨拶でした。
【仕舞】殺生石
能には那須町が舞台の演目が2つあるとワークショップで説明されました。その一つが
殺生石と言う演目です。中国で悪さの限りを尽くした狐が中国に居られなくなってインドに逃げた。そのインドでも居場所が無くなり、日本の那須に逃げて来たそうです。そして那須の殺生石で討ち取られると言う演目だそうです。
はっきり言って能のセリフは全く聞き取れませんでした。ワークショップでストーリーを聞いていたので、シテ(主役)が狐なのも知っていたし、飛びまわってるのは悪さをしてるんだと判りました。仕舞とは華やかな衣装を着けずに舞うことだと、隣の席のお兄さんに後で聞きました。白黒の袴姿で、ピョンと高く飛ぶ姿は見事でした。しかも着地の音が楽器の音の様にリズムの一部となっていました。狐が撃たれるシーンも、とても分かり易かった。地謡が何を言ってるか分からなくてもストーリーを知ってれば結構楽しめました。でも地謡のセリフが分ればもっと楽しめるんでしょうね?
【能】猩々(しょうじょう)
猩々のストーリーは那須薪能のパンフレット裏にも現代語で書かれていました。加えて会場に入る時、地謡のセリフを書いた紙ももらいました。おかげで今度は地謡が何を謡ってるのか聞き取れました。台詞の紙を見ながら聞くと能も、とても分かり易かったです。
始めはワキ(脇役?)の語りで現実の世界から始まります。ワキの高風は孝行ゆえ、霊夢で酒を売ると富貴の身となると告げられます。お告げの通り酒を売って富貴の身となりました。その高風のもとへ毎度来て酒を飲んでも顔色が変わらないものがおり不審に思い名を訪ねると「海中に住む猩々」と名乗ります。高風が酒を用意して藩陽の江で待っていると猩々が現れ、高風の江徳を褒め、舞を舞い、壺を酒で満たして返します。その壺の酒はいくら汲んでも尽きない酒壺となりました。これは夢でしたが夢が覚めても酒の尽きない酒壺は無くなりませんでした。と言うお話し。
なるほど能のシテ(主人公)は人ではありません。神様だったり、幽霊だったりするようです。舞台も夢の中の出来事だったりします。人間なのは、ワキだけですが、演目の殆どは現実では無く夢の中の出来事です。足音なんかしたら、舞台が台無しなんですね。
地謡に合わせて物語が紡がれ、囃子に合わせてシテが舞います。どこから現実じゃ無くなったのか判りませんが、いつの間にか夢幻の世界に引き込まれてしまいました。ワークショップは少し長く感じましたが、仕舞と能はあっという間でした!うーん、こんな明るい照明の下じゃ無くて薪の火で見たら、ますます引き込まれそうです。薪火で見たいっ。能もTVで見ると細面の能面から顔がはみ出てたりして違和感がありましたが、遠目で薪火で見たら面だけが目立ち幻想的でしょう。
次は晴れた外で、薪の火で見たい!